日替わりコラム
すずめのお話し (前編)
ある朝、総本山の顕斎殿の入り口に、
すずめの雛が二羽、巣から落ちていました。
それを見つけた、心優しいアリ子先生は、
その二羽のすずめを、育てることにしました。
餌はとりあえず、金龍湖の鯉の餌です。
大きい雛には〈ちいちゃん〉、
小さい雛には〈ちい太郎〉と名前をつけて、
愛情一杯に育てました。

二週間もすると、二羽ともすっかり大きくなって、
巣立ちの時期が来ました。
篭から出すと、しばらくは近くで遊んでいましたが、
そのうちいなくなりました。
ところが夕方になって、
ちい太郎だけが戻って来ました。
お腹をすかせ、羽をふるわせています。
アリ子先生は、餌をあげてそっと捕まえて、
その日の夜は、篭の中にもどしてあげました。

次の朝、姉すずめの〈ちいちゃん〉が迎えに来ました。
アリ子先生は、狭い篭の中で元気に跳ねる、
〈ちい太郎〉を、また篭から出してあげました。
「ちいちゃん、ちい太郎、
 大自然の中で、しっかり生きるんだよ。」
二羽とも元気よく、羽ばたいて飛んでいきました。

それから、しばらくしてからでした。
アリ子先生が、総本山の竹林で、献労していました。
『チゥ チゥ チゥ』
「あっ、ちい太郎。」
竹林の奥の方で、小さいすずめがこちらを見ています。
アリ子先生は、おもわず叫んで、
すずめの声のほうへ、走っていきました。
そして、覆い繁った竹藪の中に入って、
ずんずん、ずんずん、進んでいきました。

ずんずん、ずんずん、ずんずん、
どのくらい進んだか、分からなくなったとき、
突然、大空の下に、大きなお屋敷が現れました。
「わぁ、立派なお屋敷たい。」
アリ子先生が、感心して見上げていると、
そこへ、二羽のすずめが現れました。
『アリ子先生 いのちを助けていただいて
 本当にありがとうございました』
「あっ、もしかして、ちいちゃんとちい太郎。」
『はい 今日は アリ子先生に お礼をしたくて
 ここまでご案内いたしました どうぞこちらへ』

そこは、すずめの御殿でした。
たくさんのすずめたちが、飲めや歌えやの大宴会、
アリ子先生を、手厚くもてなしました。
楽しい時間も、あっという間に過ぎて、
日が暮れてきました。
『アリ子先生 今日は来ていただいて
 本当に ありがとうございました
 私たちは もう寝る時間になりました
 お礼にお土産を 用意しました
 大きいつづらと 小さいつづらがありますが
 どちらを お持ち帰りになりますか
 それとも 両方になさいますか』

アリ子先生は、このお話し、
どこかで聞いたことがあると思い、よく考えました。
「こういうときは、小さいつづらの方が、
 よかとの入っとるばい。
 そいけど両方て言いよるし、まぁよかたい。
 孫もいっぱいおるけん、両方ください。」
『アリ子先生 お元気で さようなら チゥ チゥ』
アリ子先生は、献労で鍛えた腕っ節で、
大きいつづらと、小さいつづらの、
両方かついで帰りました。

(9月18日の後編へつづく)
文・絵:前田 智子9月11日

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